1: (^ェ^) ★2018/06/02(土) 14:55:28.73
時の在りか首相と副総理はなぜ笑う=伊藤智永
毎日新聞2018年6月2日 東京朝刊
日本大アメリカンフットボール部の悪質タックル事件にこれほど関心が集まった背景の一つは、モリ・カケ問題でたまった鬱憤をダブらせる人が少なくないからだろう。こじつけではない。
公明党本部には毎週、全国から電話、メール、ファクス、手紙など総計5000件近い意見が寄せられる。半分以上は党の支持者でない人たちの声だ。
先週、最も多かったテーマは日大アメフット事件だった。なぜ、スポーツの話題で政党に物申すのかと言えば、まさに今の政治と根は一緒だと思い当たるからである。大半が異口同音に、
「指導者たちのウソや無理強いがまかり通る光景は、国会と同じではないか。社会のモラル崩壊は、政界からスポーツ界まで底流でつながっている」
との見方を語るそうだ。
それを自民党に訴えても、聞き流されるのが落ち。野党に託しても、政権には馬耳東風。そこで、連立与党なら多少とも政権に伝わるのではないかと期待し、支持者でない人たちが公明党に言おうと思い立つらしい。
立憲民主党の枝野幸男代表が日大アメフット事件を引き合いに
「直接結びつけるのはいかがかとも思うが、いろいろなところで『安倍化』が進んでいる」
と発言したところ、ネットの安倍支持者たちは「左派の印象操作だ」と反発したが、公明党の広聴集計を知れば、あながちとっぴとは言い切れまい。
* *
モリ・カケ問題に広がるうんざり感とは何だろう。
何より常識を壊された無力感がきつい。次々に文書を突きつけられても、首相や政府高官たちに平気で言い逃れと開き直りを続けられると、真面目に関心を持つ方がばからしくなってくる。私たちが政治を観客気分でながめている限り、やじ馬心理の飽きっぽさから逃れるのは難しい。
安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の、場にそぐわないニヤニヤ顔が発する「負のオーラ」も無視できない。あれを
「余裕の笑顔」
と報道するメディアは、人間洞察が甘すぎる。せめて
「ごまかし笑い」
と表現すべきだろう。ちょっと想像すれば、本当に余裕があるなら、まともな大人はこういう時に意味もなく笑いはしない。
昨秋の「平成版黒い霧解散」で一度は雲散霧消させたモリ・カケ問題が再燃した今春、安倍、麻生両氏がいかにうろたえたかについてはいくつもの見聞情報がある。それぞれ荒い言葉を吐き、怒声を上げた場面をここに描写したらドラマチックだろうが、熱しやすく冷めやすい劇場型政治を助長するだけとも思うので控える。2人は間違いなく焦っていた。
だから、作り笑いを浮かべるのだ。不自然な薄笑いは見ている側を居心地悪くさせる。その呪力は侮れない。不可解な笑顔を見ながら、論理のすり替えや強弁を繰り返し聞かされていると、うんざりを通り越して、もう見たくない、聞きたくないという嫌気に浸されてくるではないか。
麻生氏が暴言を連発したのも、国際会議や派閥の会合では暴走しないのだから、責任論から関心をそらす時間稼ぎだったに違いない。下手な芝居に見ほうける観客こそ、いい面の皮である。
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