
韓国のアイドルグループ・BTSは、なぜ世界的なスターになれたのか。フリージャーナリストの金敬哲氏は「BTSの成功の裏には、熱心なファンである『ARMY』の存在がある。世界中のファンたちに応援の仕方がマニュアル化されて共有されており、それがビルボードチャート1位につながった」という――。 ※本稿は、金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
■BTSの成功を支えた「ARMY」が持つ意味
BTSの成功を考える際に、熱心なファンである「ARMY」たちの存在は外せない。この呼称にはいくつか意味があって、「Adorable
Representative MC for
Youth(若者を代表する魅力的なMC)」の頭文字をつなげた言葉であったり、文字通り軍隊を意味する「ARMY」であったりすると言われる。ご存じの通り、BTSの韓国語名は「防弾少年団」だ。銃弾のように降り注ぐ社会的偏見と圧迫を防ぎ、自分たちの音楽と価値を守り抜くという意味が込められているのだが、ファンは彼らBTSを守る軍隊(ARMY)だというわけだ。
■PVの再生数を上げるために一晩中無音でストリーミング
「16年に1年間、米国で英語研修を受けて帰国しましたが、韓国に帰ってからは事情があって、中学2年生から3年生にかけての1年ほど、学校を休んでいました。その時、弟がYouTubeでBTSのPVを見ているのを偶然目にして以来、ハマってしまいました。それからファンクラブがあることを知って加入したんです。会費の3万5000ウォンを払うと、キットとカードが家に届けられた。ファンクラブは1年ごとに更新しなければならないのですが、コンサートチケットの前売りやARMYのための公式グッズが購入できるのが一番の特典です。(現在、コンサートはARMYだけが予約できるようになっている)」
彼女は同世代の若者たちと同じように、一日中、BTSの応援にのめり込んだという。その方法も現代ならではである。
「当時は学校に行っていなかったため、目が覚めて寝るまで、ずっと関連情報を探し回っていました。ファンがYouTubeにアップロードする動画を視聴してみたり、ARMYのファンカフェに寄ってお知らせを確認したり……。新曲が発売されれば、ツイッターの『総攻』(チョンゴン=新曲の順位を上げるため、ファンらが総攻勢をかけること)アカウントで教えてもらった通り、援護射撃をするんです。PVの再生数を上げるためにストリーミング再生を繰り返す『ミュス』や、無音でストリーミング再生を続ける『無音スミング』などをしながら、夜通しARMYたちとリアルタイムでチャットをしていたこともあります」