
サムスン(SAMSUNG)電子は、韓国人にとって良い影響と共に悪い影響も及ぼした。雇用を創出し、輸出に寄与することにより、韓国経済をけん引した点は良い影響に属する。しかしこのようなサムスン電子の頑張りが「日本に追いついた」という誇大妄想に陥らせたという点は悪い影響に属する。
サムスン電子は、メモリー半導体の分野で30年間トップを走っている。特に2000年以降は、SONY、PANASONIC、SHARPといった日本のIT企業が不振を見せる一方で、サムスン電子はメモリー半導体を打ち出し、本格的にリードし始めた。
2010年以降は、スマートフォンの大衆化という事業チャンスをうまくいかしたおかげで、メモリー半導体と共にスマートフォンを主力事業として育て、これまで日進月歩で成長してきた。2021年、サムスン電子の売上は280兆ウォン(約28兆円)、営業利益は51兆ウォン(約5兆円)だった。2022年第1四半期(1~3月)の売上は70兆ウォン(約7兆円)を超えると推定され、第1四半期の売上としては最高記録となるとみられる。
「サムスン電子の営業利益が、日本の1位~10位のIT企業の営業利益の合計より大きい」という表現は、韓国でずいぶん前からうんざりするほど聞くものとなった。これまでの30年間、サムスン電子は韓国人の自尊心や“克日”(日本を克服する)の象徴だった。
ところが、自尊心が度を越したのか、今日の韓国人はサムスン電子のこのような頑張りがまるで韓国の経済力が日本の経済力に追いついた証拠でもあるかのように錯覚するようになった。
錯覚は段々とひどくなり、「日本は大したことない」という雰囲気が支配するようになり、「日本はもうすぐ滅びる」、「日本が開発途上国に落ちる」という話すら実現性の高いものとして受け入れられる状態になった。言い換えれば、サムスン電子の頑張りが韓国人たちに虚栄心を持たせ、このような虚栄心が30年間累積された結果、今日の韓国社会は巨大な妄想のるつぼに落ちることになったのだ。
日本の韓国向け輸出審査強化措置(2019年)によって、韓国の経済は強くなり、むしろ日本の経済が打撃を受けたといううそすら今日の多くの韓国人が疑いなく受け入れるほど、韓国社会は誇大妄想に陥っている。
ところが韓国人がこのような誇大妄想から目覚め、冷酷な現実を自覚するようになる日が遠くなさそうだ。サムスン電子は今この瞬間、華やかな実績を誇っているが、没落の兆候があまりにも著しく表れているからだ。
1つ目の没落の兆候は、サムスン電子のスマートフォン事業が技術的限界に行き当たった点だ。2022年2月に発売したサムスン電子の最新作となるGalaxy S22の購入者、約1800人がサムスン電子を相手に3月に集団訴訟を起こした。
サムスン電子は2016年からスマートフォンにGOSを搭載してきた。「発熱」問題を根本的に解決できず、これまでGOSという一種の「目隠し」で何とか耐えてきたのだ。そして今回のGalaxy S22の場合、GOSによる性能低下現象があまりに顕著に表れ、多くの消費者が気づいたのだ。
これはまるでスピードを楽しむために高性能のスポーツカーを購入し、高速道路でアクセルを踏んだが「エンジン過熱の恐れがあり、時速100km以下でのみ走行可能」という警告灯がついて速度がそれ以上は上がらないのと同じ荒唐無稽なケースに該当する。サムスン電子に裏切られたと感じた消費者たちの集団訴訟にさらにつながる可能性がある。
発熱の原因は、頭脳に該当するAPによるものとみられる。サムスン電子のスマートフォンに搭載されているAPは、2つのうち1つだ。1つはクアルコム(QUALCOMM)社が設計してサムスン電子が委託生産(ファウンドリ)をした「スナップドラゴン」シリーズで、もう1つはサムスン電子が自ら設計と生産をした「イクシノス」シリーズだ。
iPhoneに搭載されているAP(Aシリーズ)の場合、アップル社が設計し、台湾のTSMC社が委託生産する。ところがiPhoneは何も問題がない反面、「スナップドラゴンAP」もしくは「イクシノスAP」が搭載されたサムスン電子のスマートフォンでは発熱の問題が起きている。
「スナップドラゴン」APの設計(クアルコム社)に問題があるため、発熱が起きるという推測も可能だが、サムスン電子が設計した「イクシノス」APでも発熱が起きるという点を考えると、設計側というよりはサムスン電子の生産工程側に問題が存在する蓋然性が高い。発熱問題を根本的に解決できず、GOSという小細工に依存しているサムスン電子は、このままだとNOKIAの道を歩むしかない。
過去、約10年間、世界市場1位を守ってきたサムスン電子のスマートフォンは、もうアップルのiPhoneに追い越される状況となり、2021年の販売TOP10のスマートフォンを見てみても、サムスン電子のスマートフォンモデルはわずか1つがランクイン(6位)しただけだ。それも安価のモデル(Galaxy A12)だった。
一方、iPhoneは7つのモデルがランクイン(1~5位、8、9位)し、シャオミ社は2つのモデルがランクイン(7位と10位)した。またアップルのiPhoneは、2021年世界のスマートフォン市場の全体利益の75%を占めたことにより、サムスン電子を圧倒した。
サムスン電子はメモリー半導体分野で頭角を見せているだけで、システム半導体の分野においては大して存在感のない状態だ。サムスン電子の立場としては今後、半導体市場で押されないためには必ずシステム半導体の分野で地位を高めなければならない切迫さがあるのだ。
ところが現実は暗い。例えば、サムスン電子はクアルコム社からシステム半導体「スナップドラゴンAP(8Gen1)」の設計図をもらい、4nm(ナノ・メーター)工程で委託生産(ファウンドリ)しているが、収率が35%しか出ていない。
収率が35%なら、生産した製品100個のうち35個だけが良品(正常な製品)で、65個は不良品という解釈になる。サムスン電子が自社設計した「イクシノスAP」も4nm工程で生産しているが、収率はさらに低い30%内外の水準に過ぎないことが伝えられている。
このような不安な工程で生産されたAP(スナップドラゴン、イクシノス)がサムスン電子のスマートフォンに搭載され、発熱問題を起こしているのだ。今回、ヨーロッパで発売したGalaxy S22の場合、「イクシノスAP」が搭載されたが、GPS機能に不具合が出る問題も起きた。
台湾のTSMCの場合、同じ4nm工程での収率が70%という水準だ。サムスン電子の2倍となる。5nm工程でもサムスン電子の収率は50%にしかならない。一方、TSMC社の5nm工程での収率は80~90%水準を見せていると伝えられている。TSMC社の技術力がサムスン電子を圧倒しているのだ。
インテルとアップルは次世代3nm工程で生産することになる超精密半導体の物量をすでにTSMC社に割り当てることにし、サムスン電子の顧客であるクアルコムやNVIDIAすら今後、超精密半導体の生産をTSMC側に割り当てようという雰囲気だ。
この場合、もしTSMCで生産したクアルコムの「スナップドラゴンAP」で発熱問題が起きなければ、サムスン電子はさらに大きな困難に陥るしかない。なぜなら、同じクアルコムの設計図(スナップドラゴン)に従って生産したAPなのに、サムスン電子が生産したAPでだけ発熱が起きたという点が確実に証明されることにより、サムスン電子の生産工程に問題があるという事が表れる状況になるからだ。
そうなると、国家安保の側面において、半導体の自給化を推進するアメリカの政策と相まってサムスン電子は次第に半導体市場から押される可能性が高いと言える。
サムスン電子の売上の39%はスマートフォンで、34%は半導体だ。したがって、このようにスマートフォン事業と半導体事業において同時に技術的限界に直面したという事実は、非常に深刻な問題だ。サムスン電子がもしこのような技術的問題を解決できずに尻込みしていたら、サムスン電子は今後、没落の道を歩むしかない。
技術的な限界と共に、信頼の限界も心配される。サムスン電子は2月にGalaxy S22を発売し、大々的に高い性能を広告した。ところがサムスン電子が広告で出したデータの数値は全てGOSが作動しない状態で出たものだった。
このようなデータを信じて購入した消費者は、高性能ゲームなど実際にスマートフォンを使用した時にGOSの作動によって、性能(AP、画面解像度など)の低下現象を体験する不便さを感じることになった。「時速300kmの速度で走れるスポーツカー」という広告を信じて購入したが、「エンジン過熱の恐れがあり、時速100km以下でのみ走行可能」という事実を後から知ったのと同じような裏切りを消費者たちが感じたのだ。
サムスン電子が技術的限界に直面したのは、韓国全体の状況をそのまま象徴していると言える。サムスン電子が日本のSHARPやアメリカのマイクロンから半導体技術を学んで成長したように、今日の韓国はこれまで日本やアメリカの支援のおかげで成長することができた。
しかし韓国では世の中を変えられる革新的な技術力がない。日本やアメリカの支援のおかげで、例えば1から2や10を作り出せるようになったが、無(0)から有(1)を創造する革新的な能力はないのだ。
結論的に、今のサムスン電子が直面した危機は、初めから革新的な技術力がないから表れたものだ。したがって、この問題は決して短期間に解決できる性質のものではない。もう少し正確に言うなら、多くの時間を与えると言っても解決できる可能性は希薄だ。
ただし、過去に日本やアメリカが技術的に韓国をたくさん助けてくれたように、今の日本やアメリカがもう一度、革新的な技術を韓国に提供するなら、韓国は再び跳躍できる可能性があると言える。
しかしそうなるには、韓国がこれまで日本やアメリカに見せた恩知らずな行為が大きすぎて実現される可能性は、ほぼなさそうだ。このままだとサムスン電子の没落と共に韓国人の自尊心も落ちる状況は避けられない。
(終わり)
※この記事は韓国の保守論客ファンドビルダー氏の寄稿文を日本語に翻訳したものです。翻訳の正確さに対する責任は当社にあります。
※ファンドビルダー氏:ソウル出身。高麗大学卒。韓国人が幼い頃から学び、聞き、見てきた日本関連情報の大部分が歪曲、誇張、捏造などで汚染された状態であることを残念に思い、真実を知らせる趣旨でコラムを書いている。慰安婦、徴用、外交・安保、経済など様々な分野を扱う。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e2449c9d6a12f57968482fbc8c942b53f83e14fb
https://news.yahoo.co.jp/articles/c2cfd03fd62487ed8ef9037db63220aebc1f9f0d
https://www.koreaworldtimes.com/topics/news/10748/
現代自動車、サムスン電子、LG化学…文在寅政権で「韓国企業の韓国脱出」が相次ぐワケ
https://www.google.com/amp/s/president.jp/articles/amp/52514%3fpage=1
サムスン終わったら韓国は詰み( ・∀・)