「旅行契約書には買い物義務がないと明記されているが、ガイドに買い物を強要されました。ガイドがショッピング割当量をクリアしないといけないと脅しました。70歳という高齢者にこんな口汚い言葉を浴びせるとは…もう二度と韓国に行きません」
最初の引用事例は8月20日に台湾の主要放送局TVBSが釜山を訪れた台湾旅行客の情報提供を受けて報道した内容だ。2つ目の事例は韓国に訪問した中国人が撮影した映像を9月13日に中国ソーシャルメディア(SNS)「抖音(TikTokの中国国内版。海外では視聴不可)」に投稿された内容で、中央日報が単独入手した。韓流の影響力が大きくなって韓国観光のイメージも上昇したかのように見えるが、実際はそうではない。「格安ダンピング(不当廉価)観光」の恥ずかしい現実は変わっていなかった。
◇「韓国、永遠にアンニョン(サヨナラ)」
中国SNS「抖音」の映像を見るとガイドと観光客が買い物問題で激しく口論している場面が生々しく捉えられている。中国僑胞(海外在住韓国人)と推定される韓国ガイドが「買い物しないなら車から降りろ」と声を荒らげている。観光客が「必ず買い物しないといけないのか」と聞くとガイドは「ショッピングツアーに来たんだから買い物するのは当然」と返す。口論が続くとガイドは韓国語で悪態をつく場面もあった。映像の最後に年齢を70歳と明らかにしたこの中国人は「韓国ガイドの水準がこれほどまでに低いとは思わなかった」とし「永遠にアンニョンだ、韓国」と話す。
訪韓外国人が土産物店での強制購入で不快な思いをしたり口論になったりするのは、正直なところ珍しい事件ではない。なぜか。外国人ダンピング観光の手法を見ると理解することができる。外国人団体観光客は航空料程度の費用だけ支払って韓国にパッケージ旅行に来る。韓国に来ると、ソウル・釜山・済州(チェジュ)など、どこへ行っても無料観光地を中心に駆け足観光旅行をして、土産物店や免税店を数回訪問する。旅行会社とガイドは免税店とショッピングセンターが顧客の購入額によって与えられた手数料で赤字を埋める。旅行契約書には買い物義務はないと書かれていても、ガイドの執拗な強要が続く理由だ。
こうしたダンピング観光は特に中国団体観光の間で横行している。国内旅行会社間の過熱競争が最も大きな原因だ。コロナ禍以前には赤字覚悟の「マイナスツアー」程度ではなく、中国旅行会社に旅行客1人当たり追加金を与えて団体を買ってくる「人頭税」まであった。
中国団体観光は8月10日から再開された。THAAD(高高度防衛ミサイル)配備に対する報復措置で中国政府が「限韓令」を下してから6年5カ月ぶりとなる中国団体観光客受け入れだ。韓国観光業界も期待が大きかった。游客(中国人観光客)が怒涛のように流れ込むだろうという報道が相次ぎ、観光業界も準備に着手した。9月7日には韓国旅行業協会(KATA)が中国旅行客専門の韓国旅行会社とともに決起大会を開いた。「人頭税の支払い、過熱した格安競争、マイナスツアー費、買い物強制」旅行から脱皮しようという趣旨だった。
しかし現実認識が甘かった。KATAのオ・チャンヒ会長は「過去とは違って買い物手数料をもらっても旅行会社が赤字を埋めることができないほど観光市場が変わった」とし「過去のような悪習がかなり改善された」と話した。複数の中国専門担当旅行会社に確認した結果も同じだった。現在、韓国の状況が中国旅行会社の安すぎる価格要求を受け入れる状況ではないと回答した。
ではSNSに投稿された映像が珍しいことなのだろうか。中国重慶の中堅旅行会社「重慶中国青年旅行サービス」のソウル4泊5日の旅行商品を例に検証してみよう。航空料を含めた1人当たりの経費は2580元(約5万27000円)で、4泊すべて仁川(インチョン)にあるビジネス級ホテルで泊まる。有料観光地の訪問は景福宮(キョンボックン)(10人以上外国人団体おとな1人2400ウォン)だけで、清渓川(チョンゲチョン)・戦争記念館・北村韓屋村(ポクチョン・ハノクマウル)・月尾島(ウォルミド)のような無料観光地だけをひたすら訪問する。代わりに免税店をはじめ、高麗人参・ケンポナシのような土産物店は8回以上訪問する。
◇現場「知ったこっちゃない」…広報イベントだけに熱を上げる韓国政府
文化体育観光部は9月、「中国人のK-観光を全面アップグレードする」と発表した。低価格観光の予防、無資格観光通訳案内士の取り締まり、中国専門担当旅行会社の業務実態点検のような内容が含まれた。では現在文化体育観光部はダンピング観光の実態を把握しているのだろうか。文化体育観光部のパク・ジョンテク観光政策局長は「該当映像は確認できなかったがダンピング観光に対する懸念は認識している」とし「不公正観光を常時監視できる申告センターの設立を構想中」と話した。
しかし政府の観光政策が広報用イベントに重点が置かれているという指摘を避けるのは難しそうだ。9月5日文化体育観光部が発表した2024年観光分野予算案を見ると、「2024韓国訪問の年事業」増額が最も目につく。今年100億ウォンから2024年177億5200万ウォンで、観光分野の予算のうち最も大きな割合で予算が上昇した。韓流観光活性化予算も30億ウォン増やした。「韓国訪問の年」の目玉事業が「コリア・グランドセール」だ。換言すればショッピング観光活性化だ。外来観光客旅行商品に買い物の比重が多すぎるのが問題の今、政府はショッピング観光をさらに育成しようという立場だ。
観光現場は政府が広報用イベントだけに偏らず積極的に取り締まりに出るよう注文する。前述のCさんは「中国人ダンピング観光団体は資格証のない中国僑胞が案内をして韓国人観光通訳案内士を「シッティングガイド(Sitting Guide)」として連れて回る場合が多い」とし「ベトナム団体観光もベトナム不法滞在者をガイドとして使う場合が普通だ」と話した。
シッティングガイドは有資格ガイドをいう。観光振興法により外国団体観光客は必ず資格証明がある観光通訳案内士の案内を受けなければならない。この時、旅行会社が使う手口がシッティングガイドだ。ショッピングの実績が重要な旅行会社は買い物誘導技術に長けている現地人ガイドに案内を任せ、シッティングガイドを取り締まり準備用として添乗させる。運転しながら案内するいわゆる「ドライビングガイド」も不法が多い。最近求人・求職サイトに外国人個別旅行客を相手にする「ドライビングガイド」の採用広告が出ているが、個人車両でガイドが運転までするのは厳然たる不法行為だ。
漢陽(ハンヤン)大学観光学部のイ・フン教授は「大きな事故が起こる前に中国観光市場の問題を韓国政府が正確に把握してデータも確保しなければならない」とし「中国消費者が良質の商品を選択できるように基準を提示するのも重要」と話した。
https://japanese.joins.com/JArticle/310033
2:ななしさん
ますます韓国に行きたくなくなった