「相当の理由が認められない」「韓国で、1人で住めると判断した」。日本人との結婚を機に2006年に来日し、永住権を得た三島市内の韓国国籍の李素?[イソヨン]さん(55)は、母鄭潤子[チョンユンジャ]さん(77)の在留資格の不許可を告げる名古屋出入国在留管理局の通知に、言葉を失った。
今年2月、親族の事情で韓国仁川にあった家に住めなくなった鄭さんを急きょ呼び寄せた。鄭さんは不安症とうつ病を患い、高血圧や糖尿病の持病もある。韓国に、帰る場所はない。だが、入管からの不許可通知を受け、7月19日には帰国しなければならない。
必要な書類を提出すれば認められると考えていた李さんは戸惑いを隠せない。「ただ母をそばで面倒見たいだけなのに」。母国で受け入れ施設を探すか、一時帰国して面倒を見るか、他に方法はあるのか、答えは見いだせない。鄭さん自身も「頭の中が真っ白」と眠れない日々が続く。
出入国在留管理庁によると、永住者の親であることを理由に取得できる在留資格はなく、人道的な配慮から認めるケースが例外的にあるという。同ビザの申請を取り扱う行政書士事務所インターオフィス(東京都)の山内俊仁代表は「認められるケースは1%に満たないと聞く」と話す。新型コロナウイルスの感染が落ち着いた頃から申請数が伸びていて、許可のハードルも上がっているという。
同事務所が昨年10月にホームページ上で現状を紹介したところ、1カ月で20件ほどの相談が寄せられた。その後も相談は続き、ニーズは多いとみられる。静岡県国際交流協会によると、県内でも同様の相談が年に数件寄せられている。
同管理庁は「永住者の在留資格数が年々更新される中、高齢の親を呼び寄せたいニーズがあることは認識している」としている。
老親扶養ビザの取得が難しい背景について、行政書士事務所インターオフィスの山内俊仁代表は社会保障費の増大が背景にあると解説する。外国人の医療費増につながりかねず「国はできるだけ許可したくないのでは」と推測する。
老親扶養ビザは取得要件が明示されない「告示外」の特別活動ビザに分類される。特別活動として告示される「高度専門職外国人の親」の導入時にも社会保障制度の適用に関する議論があったという。
一方、同事務所への相談者は、日本の社会保障を不正に受けようとする意図はないという。外国人労働者の受け入れが進む中、山内さんは「日本で働く外国人の親の問題が顕在化し始めた。『日本に長く貢献してきて最後の仕打ちがこれか』と問題視する声もある。制度の在り方を見直す時期にきているのではないか」と話す。
<メモ>出入国在留管理庁によると、2023年末時点の在留外国人数は341万992人と過去最多を更新した。国内で人手不足が進む中、即戦力の外国人労働者を受け入れる目的で2019年に「特定技能制度」が開始。新型コロナウイルス感染拡大で20、21年は落ち込んだが、22年末に初めて300万人を突破した。19年末に約79万人だった永住者の在留資格を持つ人も増加傾向にあり、23年には89万人に達した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9ad4053d1203736e255549b4520512fdaa1a03b
14:ななしさん
親が心配なら帰国しろ