
日本の東京都内で開催された駐日韓国大使館主催「韓日国交正常化記念レセプション」に参加したある人物は、米国のドラマ『サバイバー: 宿命の大統領』を引き合いに出した。このドラマは米国の大統領と政府関係者が1カ所に集まっていたため全員がテロの犠牲になり、その後起こった事態を描いた政治ドラマだ。外国大使館の主催行事に首相を含む日本の大物政治家が数多く参加したが、これはこのドラマを思い出すほど異例の状況だった。
レセプションには日本の石破茂首相をはじめ内閣序列1-4位となる官房長官、財務大臣、外務大臣が出席し、また3人の首相経験者も同席した。さらに防衛省からは中谷元・防衛大臣、防衛省政務官、事務次官、自衛隊統合幕僚長、海上幕僚長、陸上幕僚長も全員出席した。これも前例がないという。
このように石破首相が韓国と李在明政権に対し「最高レベルの誠意」を示し、韓日関係改善の強い意思を示した背景には、それなりの政治的決断があったとみられる。表向きは李在明(イ・ジェミョン)大統領が今月初めの就任後、友好的なメッセージを出してきたことへの回答だが、その裏では安全保障、外交、さらには政権運営など石破首相が置かれている複雑な事情があったと考えられる。
まず中国の脅威が日々高まる中、「石破版NATO(北大西洋条約機構)」を構想する石破首相にとって、「韓国は絶対に必要なパートナー」と考えているとの見方だ。米日同盟を基軸に韓国、オーストラリア、インド、フィリピンなどアジア太平洋諸国との集団的安全保障体制構築が石破首相の持論だ。先月末にフィリピンで開催された米国、フィリピンとの合同演習「カマンダグ25」には日本の自衛隊と韓国の海兵隊が参加したが、日本の関係者は韓国を大きく歓迎する雰囲気だったという。これについて日本経済新聞は「4カ国が共通の戦況を想定し訓練を行った」と伝えた。ある外交筋は「大量のミサイルを保有し核能力を高めている北朝鮮の存在を考えれば、日本にとって韓国は安全保障面で同じ課題を抱えた同僚だ」と説明した。
石破首相がかつての安倍晋三首相のように米国のトランプ大統領と親密な関係を築けていないことも、韓国に対して積極的に手を差し出す理由との見方もある。日本メディアは「個人的な関係を重視するトランプ大統領の復帰は日本の外交にとって『孤立』のアラートになった」と伝えた。トランプ大統領が中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記らと突然親密な関係を築く可能性も排除できないため、米国に大きく依存している日本は「プランB」が必要になるとの見方だ。トランプ大統領が進める関税政策、在日米軍の駐留費負担要求に対処するには、同じ利害関係を持つ韓国と歩調を合わせればそれなりのシナジー(相乗作用)効果が期待できるというのが専門家の見方だ。
過去の日本の政権とは違い、「親韓」のカラーを出しても支持率にさほど影響しないことも影響しているようだ。石破内閣は衆議院で過半数を確保できていないため、過去最弱の政権と評価されている。石破首相はかつて自民党の主流派だった旧安倍派議員らと政敵関係にあるため、党内基盤も弱い。石破内閣の支持率は30%台だが、昨年日本内閣府の調査で日本国民の52.8%は「韓国に好感を持っている」と答えた。別の調査では日本人の86%が「韓米日3カ国の安全保障協力強化に賛成」と回答した。そのため韓国と密接な関係を築くことはむしろ支持率上昇にプラスになる可能性が高いというわけだ。
さらに読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、NHK、TBS、テレビ朝日など日本の大手メディアは「韓日関係改善は日本にとって国益」との論調を維持している。ある自民党の元議員は「少なくとも今は韓国と対立しても得られるものはない」と語る。日本のある新聞記者は「日本のエリート官僚たちは李在明政権が韓国国内の世論に流され、いつ反日に転換するか分からないという疑念を今も持っているが、それでも石破首相は韓国の新政権を信じることにしたようだ」との見方を示した。
東京=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

朝鮮日報 2025/06/23 11:15
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