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1:ななしさん 2026/07/23(木) 16:44:38.85
【インタビュー】尹徳敏・前駐日韓国大使 、「世界で最も似ている二つの国…自由民主主義を守るため手を携えるべき」
「韓日が手を組めば世界第4位の経済ブロックになる」

◆尹徳敏(ユン・ドクミン)

1959年生まれ。韓国外国語大学政治外交学科卒業。米ウィスコンシン大学で政治学修士号、慶應義塾大学で法学博士号を取得。外交安保研究院教授・安保統一研究部長、大統領直属未来企画委員会未来外交・安保分科委員、国立外交院院長(2013~2017年)、駐日本国大韓民国特命全権大使(2022~2024年)などを歴任。現在、韓国外国語大学碩座教授。

【月刊朝鮮】最近の韓日関係をめぐり、注目を集めている構想の一つが「韓日経済共同体」である。欧州連合(EU)のように、両国が経済的利害を緊密に結び付けることで、低成長やサプライチェーンの再編、米中間の戦略競争といった急速に変化する国際環境に、より効果的に対応すべきだという考え方だ。

5月20日、東京のホテルオークラ東京で第58回韓日経済人会議が開かれた。尹徳敏(ユン・ドクミン)前駐日韓国大使(韓国外国語大学碩座教授)はこの日、「いかにして韓日経済共同体をつくるか」と題して講演し、韓日経済協力の新たな青写真を提示した。

尹氏は講演で、なぜ今、韓日経済共同体が必要なのかという問題意識を示す一方、サプライチェーンの安全保障協力やエネルギー共同体の構築、人工知能(AI)分野における共同インフラの整備など、具体的な協力策を提案した。なかでも、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を活用し、事実上の韓日自由貿易協定(FTA)を構築する構想も示したとされる。

尹氏が描く韓日経済共同体とは、具体的にどのようなものなのか。経済構造も産業政策も対外戦略も異なる両国が、果たして経済共同体に近い協力体制を築くことは可能なのか。

7月9日、ソウル・光化門で尹氏に会った。日本で明らかにした構想の背景と狙い、そしてその実現可能性を直接聞くためである。

■ 理想論ではなく「生存戦略」

「韓国と日本が手を組めば、世界第4位規模の経済圏と、人口1億7500万人の市場をつくることができます」

尹前大使は、長年にわたり事実上のタブーとされてきた「韓日経済共同体」を、もはや理想論ではなく、生存戦略として捉えるべきだと強調した。

尹氏の構想は、最初から欧州連合(EU)のような共同市場や、大がかりな統合制度をつくろうというものではない。年間1300万人に達する人的往来をはじめ、サプライチェーン協力、エネルギー安全保障、AIインフラといった実質的な結び付きを先に構築すれば、経済統合は自然に後からついてくるという論理だ。

韓国と日本が結び付けば、巨大な内需市場と先端製造業の競争力が相乗効果を生み、半導体、バッテリー、ロボット、エネルギーなどの分野で、米中両国に対する交渉力を高めることができるという。

また、両国は国際社会において価値観と利害を共有する国であり、歴史問題を安定的に管理できれば、国際秩序の「ルール・フォロワー」から、新たな規範をつくる「ルール・セッター」へと飛躍できると展望する。

――韓日経済共同体を構想するようになったきっかけは何ですか。

「私個人の発案というよりも、韓日両国が置かれている戦略環境そのものが激変していることから出発した話です。国際秩序が根底から揺らいでいます。

北朝鮮とロシアの軍事同盟が復活し、北朝鮮は事実上、核武装を完成させました。中国が地域覇権国として台頭する一方、米国にはむしろ孤立主義的な傾向が表れています。

このような環境の中で、韓国がどう生き残るのかを考えざるを得ません。結局、似た価値観を共有する日本との間で、これまでとは次元の異なる協力を模索すべきだという結論に至ります。

中国の経済規模は、すでに19兆ドルを超えています。韓国は2兆ドルに届かず、日本も4兆~5兆ドル程度です。それぞれが個別に対応していては、この地域で生存空間を確保することは困難です。

地政学的環境が急変する中、価値観を共有し、文化的にも近く、経済水準も似ている韓国と日本が共通の枠組みをつくっていけば、少なくとも地域内で生き残るための空間を確保できるのではないか。それが、この構想の出発点です」

■ 「必要に応じて血管をつないでいけば……」

――尹氏の言う「経済共同体」は、FTA、経済安全保障協議体、EU型の共同市場のうち、どれに最も近いのでしょうか。

「最初から『これはFTAだ』『経済安全保障協議体だ』『EU型共同市場だ』と具体的に定義する必要はないと思います。

むしろ、必要に応じて段階的に発展していくプロセスとして捉えるべきです。人的・経済的交流をさらに活性化させ、経済上の必要に応じて互いの経済を結び付け、規模の経済をつくっていく。

エネルギーや資源の問題を解決するために協力していけば、最終的には一つの共同体に向かわざるを得ないと考えています。

初めから制度的な形を決めるのではなく、必要に応じて血管を一つずつつないでいけば、究極的には経済統合の姿に到達する。私はそう考えています」

尹前大使の言う「血管」は、すでに統計にも表れている。韓国観光公社と日本政府観光局(JNTO)によれば、2024年に韓日両国を往来した旅行者は1200万人(前に1300万人とある)を超え、過去最多を記録した。

――人口1億7500万人規模の内需市場という点も強調されています。韓国には内需市場が小さいという問題があります。

「率直に言えば、韓国は現在、成長動力という面で半導体による一種の錯覚に陥っていると思います。基本的に、韓国の内需市場は人口5000万人規模にすぎません。

これまでは中国という巨大市場があり、自由貿易秩序にも支えられていたため、韓国が市場を開拓する余地は大きかった。

しかし現在、自由貿易秩序そのものが大きく揺らいでいます。既存の内需市場だけで新たな成長動力をつくることは難しい状況です。

一方、すぐ隣には、これまで事実上十分に活用してこなかった、5兆ドル規模の成熟した日本市場があります。人口も1億2000万人に達します。

韓国が日本と共に進むならば、この成熟した5兆ドル市場は、新たなフロンティアになり得ます」

――韓国経済が大きく成長したとはいえ、規模ではまだ日本より小さいのではありませんか。

「もちろん、韓国の経済規模は日本より小さいため、日本側には異なる受け止め方もあるでしょう。しかし、両国が結合した場合の相乗効果は、それ以上に大きいものです。

いわゆる『グラビティ・モデル』という概念があります。大きな経済圏同士が結び付けば、単純な算術上の合計を超える相乗効果が生まれるというものです。

韓国も日本も、それぞれ先進経済国です。この二つが結び付いた場合、GDPが何%上がるという単純な計算をはるかに超える効果が生まれ得ます。

韓国の内需市場が人口5000万人から、1億7500万人規模の成熟市場に拡大すれば、韓国経済にとって極めて大きなプラスになると思います」

■ 日本市場の扉をたたく韓国の若手ベンチャー経営者

――従来、韓国は日本の技術を導入し、組み立てる産業構造にとどまってきたとの認識があります。韓日経済共同体が形成された場合、この構図はどのように変わるのでしょうか。

「そうした構造は、すでに完全に終わったと考えています。

韓日関係は一時、最悪の局面を迎えました。2011年以降、関係は大幅に悪化し、とりわけ文在寅政権と安倍晋三政権の時代には非常に厳しい状況が続きました。約10年間、まともな二国間首脳会談さえ開かれませんでした。

悪化したのは政治関係だけではありません。経済関係も同時に縮小しました。危機時に相互支援するための通貨スワップ協定さえ終了し、貿易額は増えるどころか、むしろ減少しました。投資は3分の1ほどに縮小しました。

韓国では、日本の輸出規制以降、『日本なしでも生きていける』という雰囲気さえ形成されました。中国という巨大市場があったため、日本を相対的に重視してこなかった面もあります。

しかし時間がたってみると、日本は依然としてアナログ機械や素材・部品・製造装置の分野で強く、職人気質を持つ国であり続けていました。

一方、韓国はその間に、完全なデジタル中心社会へと転換しました。時代そのものがデジタル時代に変わったのです。

私が日本に赴任してみると、韓日関係が改善するにつれ、多くの韓国人ベンチャー経営者が日本市場の扉をたたき始めました。『この事業なら、日本でも十分に成功できる』という自信を持っていたのです。

宅配・デリバリープラットフォームのように、韓国ですでに成功したデジタルサービスが、相次いで日本市場への進出に挑んでいました。それだけ多くのビジネス機会があるということです。

実際、赴任当初の在外公館長会議では、企業相談は三、四組程度にすぎませんでした。しかし2年目には14組に増えました。

デジタルで武装した韓国企業と若い経営者たちが、日本市場を積極的に開拓しているということです。

したがって、かつてのように韓国が日本に従属する、あるいは日本中心の構造に組み込まれると考える必要はありません。

韓国も新たな領域で、日本との経済関係において主導権を握ることができます。韓国だけが利益を得る構造ではなく、日本にも大きな利益をもたらします」

■ 「フォロワーの時代は終わった。これからはセッターだ」

――韓国と日本は「ルール・フォロワー」から「ルール・セッター」に進むべきだと繰り返し強調されています。どのような意味でしょうか。

「これまで韓国は、米国がつくった世界貿易機関(WTO)体制や自由貿易秩序の枠内で、それに従う役割にとどまってきました。

韓国は人口5000万人規模の国であるため、国際秩序の中で存在感が限られざるを得ませんでした。

しかし、韓国と日本が一つの経済共同体を形成し、相乗効果を生み出せば、世界第4位規模の経済共同体になることができます。

さらに、価値観を共有し、経済体制も似ている東南アジア諸国、ニュージーランド、オーストラリアまで加われば、10兆ドル規模の経済圏を形成する潜在力もあります。

それだけの力を持てば、韓国と日本が力を合わせ、国際秩序の中で独自の役割を果たすことができます。

単にルールに従うのではなく、ルールをつくる役割、すなわちルール・セッターになることができるという意味です。

現在、自由貿易秩序は大きく揺らぎ、大国政治が復活しています。トランプ、プーチン、習近平の時代が到来したと言うこともできるでしょう。

しかし、国際主義的秩序、自由主義的国際秩序、自由貿易秩序を依然として重視する国々が連帯することは可能です。

志を同じくする国々が共に進めばよいのです。欧州にEUがあるように、インド太平洋地域では韓国と日本が、そうした国々を受け入れる器になり得ます。

米中競争の中で、国際法と法の支配に基づく国際秩序を実現する役割を、韓国と日本が担うことができると考えています」

■ 「原油調達では、弱い買い手から主導権を持つ側へ」

――では、韓国と日本が実際に新たなルールをつくることのできる分野は、どこでしょうか。

「さまざまな分野があります。最近、最も多く議論されているのがエネルギーです。

韓国と日本は、世界でも有数のエネルギー輸入国です。とりわけ中東産原油については、かつて韓国と日本が輸入国の第1位、第2位でしたが、中国の台頭によって、現在は第2位、第3位程度に後退しています。天然ガスも事情は似ています。

問題は、韓国と日本がそれぞれ別々に動けば、買い手でありながら、交渉上は弱い立場に置かれることです。

しかし両国が共に動けば、購入規模が大きくなり、交渉力の主導権を持つ側に近づくことができます。

LNGや中東産原油を購入する際、価格交渉力などの面で、はるかに有利な条件を確保できるでしょう。

もう一つはエネルギー転換です」

――エネルギー転換とは、具体的に何を指しますか。

「原子力、とりわけ小型モジュール炉(SMR)が代表的です。

現在、原子力発電を本格的に推進できる国は多くありません。日本は福島第一原発事故後、原子力分野から相当程度距離を置きましたが、もともと伝統的な原子力大国であり、蓄積されたノウハウがあります。

韓国も一時期、原子力事業が停滞しましたが、アラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出経験などを通じ、依然として能力を維持しています。

両国が力を合わせれば、世界の原子力市場で主導的な役割を果たすことができます。そこに米国まで加われば、協力の幅はさらに広がるでしょう。

水素分野も重要です。水素エネルギーを実用化するには、巨大なインフラが必要です。

例えば、オーストラリアからアンモニアを輸入し、それを精製して水素エネルギーに転換し、水素自動車などに活用するためには、精製、貯蔵、輸送施設などのインフラを新たに構築しなければなりません。

一国だけで負担するには、天文学的な費用がかかります。韓国と日本が共同で取り組めば、実現可能性ははるかに高まります」

――韓日間の電力網接続についても言及されています。

「エネルギー・スーパーグリッドも、十分に検討可能な構想です。

釜山と福岡の間を海底送電線で結び、電力需要のピーク時間帯に応じて電力を融通し合うことも考えられます。

風力発電などにも協力の余地があります。

このようにエネルギー分野は、韓日両国が直ちにでも着手できる代表的な協力分野だと考えています」

■ 最大の障害は「相互不信」と歴史問題

――現在、最も注目されている半導体分野では、どのような協力が可能でしょうか。

「半導体も極めて重要な分野です。ただ、私たちがしばしば誤解している点があります。

韓国がメモリー半導体分野で世界最高水準にあることは事実です。しかし、サムスン電子の半導体一つをつくるためにも、オランダの露光装置、日本の東京エレクトロンをはじめとする各種装置や素材、米国の設計技術が組み合わされています。

半導体は韓国だけ、あるいはサムスン一社だけでつくることのできる製品ではありません。徹底した国際分業の産物です。

日本は半導体の前工程と後工程、素材、部品、製造装置の分野に強みを持ち、韓国は製造分野に強みがあります。

両国が協力すれば、先端半導体、光半導体、新素材分野でも新たな機会を生み出すことができます。

日本には特許や基礎・源泉技術を保有する分野が多くあります。そうした分野で、十分に協力の接点を見つけられると考えています」

――欧州は相当程度まで統合を進めました。一方、韓国と日本は地理的に近いにもかかわらず、統合には至っていません。最も根本的な障害は何でしょうか。

「『韓日経済共同体』という言葉自体が、ある意味、これまでタブー視されてきました。両国社会には、否定的な見方がかなり根深く存在しています。

韓国では、『事あるごとに輸出規制を行う国と、どうして経済統合できるのか』という世論があります。歴史問題も大きな比重を占めています。

歴史の清算が十分に行われていないのに、経済共同体から先に議論してよいのかという考え方です。大東亜共栄圏や、日本に吸収されるのではないかというトラウマも、韓国社会の底流に残っています。

反対に日本では、韓国を本当に信頼できるのかという疑問があります。

経済統合は、最も信頼できる国同士でのみ可能なものです。しかし日本には、韓国は政権が変わるたびに経済・安全保障政策が揺れ動くという見方があります。

そのような状況で、どうして韓国を信頼し、経済共同体を進められるのか、というわけです。

また、双方とも『技術を奪われる』という懸念を抱いています。韓国は日本に技術を奪われると考え、日本は韓国に技術を奪われると考えています。

結局、こうした相互不信と歴史問題が、韓日統合における最大の障害だと思います」

■ 「韓日が協力しなければ、生き残ることは難しい」

――GDP6兆ドル、人口1億7500万人規模の経済圏が形成された場合、韓国国民一人一人の暮らしは、どのように変わるのでしょうか。

「基本的には、新たな成熟市場が開かれるということです。それだけ多くの機会が生まれると思います。

現在、韓国の若い世代は、優れた経歴や能力を備えていても、就職が難しい状況にあります。

一方、日本では人手不足のため、韓国に比べれば就職しやすい状況にあります。もちろん、賃金水準や労働条件については、さまざまな側面から検討する必要があります。

しかし、両国の人材を、より幅広く、効率的に活用できるようになるでしょう。

韓国も外国人労働者を多く受け入れているため、日本の優秀な人材を韓国で活用することもできます。反対に、韓国の若者が日本で新たな機会を見つけることもできます。

欧州のように、両国間の往来がはるかに自由になる可能性もあります。ビザや出入国手続きが簡素化され、事実上の生活圏が拡大すれば、国民の暮らしはそれだけ便利になります。

旅行、就職、起業、教育、文化交流など、さまざまな領域で実感できる変化が生まれるでしょう。

最終的には、国民生活全般がより豊かになる可能性があると思います」

――日本が韓日経済共同体から得られる、最も具体的な利益は何だと説明すべきでしょうか。

「私が最も重視しているのは、地政学的な利益です。私は国際政治学者ですから、この側面を特に重要だと考えています。

現在のような地政学的環境の中では、韓国と日本は協力せずに生き残ることが難しくなっています。

中国が台頭し、米国が孤立主義に向かう可能性があります。こうした状況で日本もまた、この地域で自国の価値観と自由民主主義を守りながら生きていけるのかという問題に直面しています。

そのパートナーが韓国だと考えています。

端的に言えば、アジアで高市早苗首相を批判し、李在明大統領を批判しても、身の安全に何の問題も生じない国は、韓国と日本くらいでしょう。

では、習近平、プーチン、金正恩を批判したらどうなるでしょうか。

自由民主主義という価値を守るため、韓国と日本が協力しなければならない。その重要性は、それほど大きいのです」

■ 「どちらか一方が従属する構造ではない」

――日本には依然として、「韓国が日本にどれほど役立つのか」と考える人もいるのではないでしょうか。

「経済面でも、日本は韓国の強みを十分に活用できます。

韓国ほど急速にデジタル化した国は多くありません。韓国のデジタル技術やサービスは、日本国民の生活にも貢献できます。

宅配・デリバリープラットフォームや、ネット通販最大手クーパンのようなサービスモデルも、日本市場で競争とイノベーションを促す契機になり得ます。

日本にとっては、韓国という新たな市場が開かれることにもなります。

さらに、両国が先端技術分野で協力すれば、第三国へ共同進出する道も開かれます。これも日本に大きな利益をもたらすと考えています」

――韓国企業が日本中心のグローバル・サプライチェーンに、下請けとして組み込まれるのではないかとの懸念もあります。

「そもそも、なぜそれを『日本中心のグローバル・サプライチェーン』と呼ぶのか、私にはよく分かりません。

現在、韓国は貿易規模ですでに日本を上回っています。輸出額も韓国の方が多い。

それならば、グローバル・サプライチェーンでどちらがより重要な位置にあるのかという点から、改めて考え直す必要があります。

過去の枠組みで現在の状況を見てはなりません。私が見る限り、韓国企業の方が先行している分野も多くあります。

韓日経済共同体が形成されたとしても、どちらか一方が一方的に従属する構造になると考える必要はありません。

1910年の韓日併合や、1930~1940年代の経験を、現在の経済協力にそのまま当てはめるのは適切ではありません。

今は、当時とは全く異なる状況です」

■ 「答えは結局、経済のパイを拡大すること」

――中国の急速な産業発展に対し、韓国と日本はどのように対応すべきでしょうか。

「中国の経済規模は19兆ドルに達します。一方、韓国は2兆ドルに届きません。

これほどの格差がある中、韓国が単独で選択できる手段が何なのか、まず冷静に考える必要があります。

かつて韓国には、中国より競争力のある産業分野が数多くありました。製造業全般でも中国を上回っていました。

しかし、『中国製造2025』以降の約10年間で、半導体を除くほぼすべての製造業分野において、中国が急速に追い上げてきました。

鉄鋼、化学をはじめとする製造業全般で、韓国は苦境に立たされています。

現在は半導体による一種の錯覚がありますが、実際には韓国製造業は相当な圧力を受けています。

 中小製造業も、アリエクスプレスやTemuなどを通じて中国製品が大量に流入し、困難が深まっています。

それでは、韓国が進むべき道は何なのか。結局、答えは経済のパイを拡大することです。

すぐ隣にある5兆ドル規模の成熟した日本市場を積極的に活用しなければならない理由も、そこにあります」

――しかし、中国市場を無視することもできません。

「もちろん、中国を放棄しようという話ではありません。

ただし、かつてのように中国市場で天文学的な利益を得られるという『中国市場の夢』は、もはや有効ではないと思います。

今は、中国と正面から競争しなければならない時代です」

――それは可能でしょうか。

「少なくとも、いくつかの先端技術分野では、私たちの優位性を守らなければなりません。そのために韓日協力が必要です。

代表的な分野が、先端半導体、フィジカルAI、ロボットです。

日本はもともと、ロボット分野で世界をリードしてきた国です。ヒューマノイドロボットも早くから開発してきました。ホンダやソニーは、かなり以前からヒューマノイドの開発に取り組んでいました。

しかし日本は、それを産業化し、収益につなげる面では弱さがありました。AIとの接点、すなわちフィジカルAIへと発展させる点でも、相対的に出遅れました。

日本の素材・部品技術とロボット技術に、韓国のAI・デジタル能力を組み合わせれば、中国と競争できる先端技術分野を十分に守ることができます。

まさに、そうした分野を韓国と日本が共同でつくっていかなければならないと思います」

■ 「開かれた共同体でなければならない」

――台湾海峡有事が現実化した場合、韓日両国のサプライチェーンは、どのようなシナリオに直面するのでしょうか。また、経済共同体はその衝撃をどのように緩和できますか。

「安全保障の観点から、さまざまなことを考えることができます。

韓国と日本が協力することによって、平和を守る抑止力として機能する可能性があります。つまり、戦争そのものを抑制する効果も期待できます。

台湾の安全保障において、台湾積体電路製造(TSMC)が重要な役割を果たしているという議論があります。

中国が台湾に武力による威嚇を加えれば、半導体サプライチェーンは世界経済全体に影響を及ぼさざるを得ません。

現在の状況で、韓国と台湾の半導体生産が崩壊すれば、世界経済そのものが停止しかねません。

第一義的には、それほど台湾のTSMCの役割が重要だということです。

トランプ大統領が、台湾有事の際に介入しないかのようなニュアンスを示すこともあります。

しかし実際には、介入しないという選択は極めて難しいと思います。台湾の半導体が世界経済で占める比重が、それほど大きいからです」

――韓日を中心とする経済ネットワークは、今後、インド太平洋地域全体の経済・安全保障の構図を、どのように変えると考えますか。

「志を同じくする国々と共に進む、開かれた共同体でなければならないと思います。

韓国と日本だけで閉鎖的なブロックをつくるのではなく、価値観や経済体制を共有する国々が参加できるようにすべきです。

韓国と日本を合わせても、経済規模は6兆~7兆ドル程度です。中国は19兆ドルに達します。

意味のある経済共同体として役割を果たすには、少なくとも10兆ドル規模が必要だと考えています。

オーストラリア、ニュージーランド、そして志を同じくする東南アジア諸国まで含め、10兆ドル規模の経済圏をつくることができれば、中国とも平和的に共存できる枠組みになり得ます。

私たちが守ってきた自由民主主義と市場経済の価値を維持するための、最低限の安全装置になるのです」

――その共同体は、将来的に北大西洋条約機構(NATO)のような安全保障共同体へ発展する可能性もありますか。

「安全保障共同体やNATO型の構想へ直ちに進むことは、非常に難しい問題です。

安全保障を持ち出した瞬間、議論の敏感性は格段に高まります。

私の考えの出発点は、地政学的に厳しい環境の中で、自由民主主義の価値観と生活様式を、どのように維持するのかという点にあります。

その意味で、韓国と日本が共に歩むことが重要なのです」

■ 「国連での韓日投票一致率は97%」

――韓国と日本が共に歩むという考え方に、まだなじみがない人や、最初から拒否感を抱く人も多いと思います。

「私がこうした考えを持つようになったきっかけの一つに、国連での経験があります。

国連には数多くの決議案が上程されます。韓国と日本が共に賛否を表明する決議案において、両国の投票行動の一致率は非常に高い。

実際、韓国と日本の投票一致率は約97%で、韓国と米国、日本と米国の一致率よりも高いのです」

――驚くべき数字です。

「これは、歴史問題を除けば、気候変動、中東問題をはじめとする、ほぼすべての国際懸案や価値観に関わる問題で、韓国と日本の立場が非常によく似ていることを意味します。

戦略的利益と価値観がこれほど一致しているのであれば、協力の枠組みをつくり、積極的に活用するのが当然です。

しかし現実には、あらゆる協力が歴史問題の前で止まっています。

かつて海外の公館では、韓国と日本の外交官が最も親しい関係にありました。一緒にサッカーやゴルフをし、情報を交換していました。

中東でも、韓国と日本の大使は頻繁に会い、情報を共有していました。

ところが、いつの間にか互いを最大の敵国のように扱うようになりました。ワシントンでは、互いをけん制するためにロビー活動を行うことさえありました。

そうして10年間を消耗戦に費やした末、ようやく現在の地点まで戻ってきたのです。

再び以前の対立関係に戻るべきなのか、考えなければなりません。

韓国と日本は歴史問題を慎重に管理する一方、価値観と戦略的利益が重なる分野では、積極的に協力の枠組みをつくるべきだと考えています」

国連決議で、韓国と日本の投票行動の一致率が韓米、日米間より高いという統計は、このインタビュー全体を通じて、最も逆説的な事実の一つである。

歴史問題という一つの障壁を取り除けば、国際舞台において韓国と日本は、互いに最も近い国になり得るということだ。

「10年間争い、ようやくここまで戻ってきた」という尹前大使の言葉が示すように、韓日経済共同体構想は壮大な青写真というよりも、「二度と過去の対立に戻ってはならない」という切実な関係管理論に近い。

政府ではなく、民間の必要が両国の血管をつなぎ、その血管が、いつの日か一つの経済を形づくる。

尹氏が最初の回答から一貫して用いてきた「血管」という比喩は、かつてタブーだった言葉が、生存戦略の言葉へと変わっていく、このインタビュー全体を貫く鍵である。

https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2026/07/23/2026072380079.html
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